make love セックスをする

 大切な存在ほど優しく壊れぬよう、丁重に扱うのが世の常だ。乱雑な扱いは大切に思われてない証拠で、壊れても良い存在だと、使い捨てだと思われるらしい。
 だが自分はそうは思わない。中にはいっそ壊してほしいと思える愛もあるのだと、この瞬間、いつも実感する。



 ジュダルは白龍に肩を噛みつかれながら、腰を穿たれ、その痛みと快楽に泣き叫び続けるという凄惨な状況に置かれていた。
 もう何度達したか記憶にない。ただ股座にぶら下がっている性器は自分の体液でどろどろに濡れていたし、迸る快感の波はまだ落ち着きそうにない。それどころか考え事をする余裕も与えてくれないほど、激しい快感に飲み込まれて地に足がつかないのだ。
「あっ、そこ、そこ……」
 反り返った肉棒が直腸の泣き所を擦り上げるので、思わず腰を揺らして自分から当てにいってしまった。そこが好き、そこが気持ちい、と呟いてみる。すると彼はそうか、とだけ頷いて、何度も同じ場所を抉ってくれる。
「あひっ、ア! それ、や、やりすぎぃ、い」
 この男はゼロか百、白か黒でしか物事を考えられない。力加減を知らない。物事の中庸を知らない。だから性行為だって激しいものしか知らないのだ。
「こっこわれ、おく、おく、おかしく、なっ」
 奥が好きだと一言漏らせば、突き破れる寸前までガツガツと貫かれる。だからなるべく此処が良いとか、何処が好きとか、言わないようにしている。でないとしつこく何度も、痛いくらいの快楽を与えられるのだ。
 快楽は無制限に享受できるが体には許容範囲がある。上澄みを超えて溢れた快楽はもはや苦痛に近いのだが、彼はその理屈を理解しようとしない。
「はくりゅ、あ! あひ、ッあ、やらっ、も」
 またいく、と叫んだ。すると手前に回された指が性器を扱くのだ。
 男である自分がいく、と言えば当然、男性器からの射精を伴う。のだが、ここまで何度も強制的に射精させられていると、もう打ち止めが見えてくる。というより、何も出ないし勃起する余力すらない。
「なんだ、もう出たのか? 柔らかいぞ」
「ッこの、ばかっ、ア! 触んな、ぁっあ、だめだって、あ」
 何も出ないが、体は高みへ上ろうと勝手に暴走する。せり上がる射精欲より体の奥が収縮して、熱くなる感覚が近づいてくる。
「あっ、イ、いく、ッあ」
 ジュダルがそう叫んで背中がしなった瞬間。最奥がきゅう、と収縮し、中に嵌っていた肉棒を強く食い締めた。同時に耳元で荒い息を吐く気配を感じ、彼も達したのだと分かってしまった。

 ようやくこちらの腕を掴む白龍の手から解放され、ジュダルは息も絶え絶えに、寝台に突っ伏した。
 もう何も出ない。どこを擦られても辛い。苦しい。痛い。気持ち良すぎて辛いのだ。
「ジュダル」
 ぴくりとも動かなくなったジュダルの背中を見遣った白龍は、流石にやり過ぎたか、と焦りを感じていた。噛み跡がいくつも残る肩に触れて、うつ伏せの顔色をそれとなく確認しようとした。
 しかしそこにあった表情は白龍の想像とは少し異なる、恍惚としたものだった。
「あは、きもちい……」
「ジュダル」
「もー容赦なさすぎ。最高。ピストン重くてやばかった……」
「す、すまない。その、無理させて」
「平気だって」
 体のあちこちは確かに痛いし、とくに尻の奥は突かれすぎて鈍痛が響いてくる。孔の縁もひりひりして熱を持っているし、噛まれた部分も染みる。
 けれどそれらの痛みや疲労感によって伝わるものがあるのだ。
「もっと無茶苦茶にしてくれよぉ」
「だっ駄目だ。これ以上やると、お前の体が」
「やろうと思えば出来るんだ?」
「……」
 閉口した白龍の顔を見たジュダルが、けらけらと朗らかな笑い声を上げる。
「衝動的に抱かれるほうが俺は好き。無我夢中で余裕ない感じが、愛されてるーって実感するから」
「……」
「もうちょっと休憩したら、もっかいしたい……」
 自分の言葉で再び兆し始めていた白龍の性器を見つめた。彼はいやでも、と言いつつ満更でもなさそうな面持ちをしている。
 理性の箍を外し合って、本能のままに貪られたい。そんなあられもない欲求を口にしたジュダルは、再び白龍に組み敷かれる想像ばかりしていた。