咲けなかった花の数

 ベッドに雪崩込んで、衣服を乱し合って、肌を晒して、息を熱くして。唇を重ねて舌を合わせ唾液を混ぜると、体温が高くなって息がし辛くなる。心臓が痛いくらい拍動を繰り返し、視界が滲んだ。覚束ない手元で服を脱がせて手を這わせる。熱い皮膚の下に脈打つ血管の感触を感じて、思わず口角が上がる。
「わ……」
「僕がする」
 唐突にベッドの真ん中に押し倒され、スザクが伸し掛ってくる。ぎしぎしと派手に鳴るスプリング音が耳障りだったが、熱に浮かされた彼の表情に釘付けで、それどころではなかった。
 服を順番に脱がされ、外気に肌が触れる。でも寒気は感じない。むしろ暑いくらいだ。ふうふうと荒くなる呼吸は自分も彼も同じで、彼は馬乗りになりながら自身の手で脱衣していく。
「な、舐めたい」
「勝手にしろ」
「うん」
 下着をずらされる。布の締め付けから唐突に開放された陰茎は既に勃起していて、スザクの目前に飛び出す。彼はその光景を凝視し、それからゆっくり顔を伏せた。柔らかい睫毛が照れくさそうに何度も揺蕩うのが、よく見える。
「う、う……ふ」
「ん」
「あは、おっきい、ルルーシュの……」
 唇を歪ませながらそれに吸い付いた。いびつな笑みと卑しい瞳がこちらを見据えて、煽り文句と共に投げかけられる。情欲に濡れそぼった緑は薄暗い部屋の中でも爛々と輝き、美しさを増してゆく。
 ちゅうちゅうと先端を啜って、それから喉の奥まで受け入れる。頭を上下に揺すられると堪らなく心地よかった。柔らかい癖毛を手のひらに収めて撫でてやると、上目遣いで微笑まれる。嬉しい。もっとそれして。そう言われた気がした。
「きもひい?」
「……そこで喋るな」
「ふふ」
 竿に唇を這わせ、舌を伸ばしながら彼は嘯く。妖艶な流し目と視線が絡み合って、腰の奥が重く、熱くなる。
「ふう、は……」
「ん……」
「るるーひゅ、ん、んう、うう、ふ」
「……」
 はふはふと息を荒げ、肩が揺らめく。彼は夢中でそれを舐めしゃぶる。さながら卑しい犬のようだ。目前の餌を涎を垂らしながら貪る獣のように、口淫に没頭するのだ。
 以前までは口淫などド下手くそだった癖に、回数を重ねる毎に上達してしまったらしい。上手い分に越したことはないし減るものではないが、それとは別に、心無しか釈然としない。
 初心過ぎるが故に何かにつけて拙い仕草もまた、ある意味で男心を擽るのだ。それは自分の体が初物だという証拠でもあって。しかし行為を重ねるうちに性技を身に着けてゆくというのもまた、違う愉しみがあって良い。この心はなかなかどうしてままならないらしい。

「も、いいよ」
「やだ。飲みたい」
「馬鹿、飲むな」
 毛を引っ張って引き剥がそうとするが、スザクは聞き分けの悪い子供のように首を横に振る。そもそも子供はこんなことをしないが、それでもルルーシュの目にはそう見えた。
「駄目だって、もう、出るから」
「ん……」
 上顎で擦られ、喉の奥に押し付けられ、根本を扱かれ。もう良いと言うのに聞き入れてくれない。為す術もない。散々甚振られた陰茎からはさして時間もかからず精液が出た。

 呆気なく吐精し、全身が虚脱感に襲われる。妙にすっきりする頭では、考え事がいやに捗って仕方ない。目前に広がる光景の凄惨さ。そのつもりがなかったとはいえ、口内射精してしまったことの自己嫌悪。後ろめたさ。体は動きたくないのに思考はやけに働く。
「ほらこれ、ティッシュ……」
 ベッドのサイドテーブルから紙箱を持ち上げ差し出すが、スザクは柔らかくなった陰茎を銜えたまま首を横に振る。同時に喉が上下に動いているのが見えて、思わず声を荒げてしまう。
「飲むな、そんなもの!」
「へんなあじ」
「美味くてどうする。口を濯いでこい」
「もう飲んじゃった」
 漸くそこから口を離し顔を上げたと思いきや、そう宣言するのだ。呆れて返す言葉も見当たらず、ルルーシュは溜息をひとつ吐いて、それを返事代わりにした。
「だって勿体ない」
「なわけあるか。変態みたいなこと言うな」

 スザクはいそいそと体を動かし、着ていた物を全て脱ぎ捨ててゆく。そして脱ぎ終えたあとは再び馬乗りの体勢になって、ルルーシュの顔を見下ろす。そそり勃つ陰茎も尖った乳頭も、彼は隠さない。仄かな明かりに照らされた肉体は赤く色づき、その発情を知らしめるのだ。
「はしたない奴」
「ルルーシュが僕をこうしたんだよ」
 アンニュイな笑みを口元に浮かべて、スザクは右手の指を舐めた。唾液を絡ませた指は細く糸を引き、それをおもむろに自身の背後へ宛てがう。まさか、とルルーシュが目を見開いたが、彼は薄っすらと妖しい微笑みを浮かべるのみだった。
「っ、あ……う」
「お前」
「今日は僕が、する」
 動きかけたルルーシュの腕を制し、彼はそう訴えかけた。苦悶の表情を浮かべる彼は、噛み締めた歯の隙間から熱い息を吐き出す。震える太腿の内側は強張って張り詰めていた。でも陰茎は萎えていない。涙で潤む緑がルルーシュの顔を捉えて、じっと離さない。
「あっ、は……あ」
「で、出来るのか、自分で」
「はじめて、だから…ちゃんと、見てて……?」
 スザクは震える左手をルルーシュの肩に添えて、くちくちと後孔を弄った。布を握り締める指に力が籠もり、指先は白くなっている。小刻みに揺れ、時折跳ねる腰の曲線が部屋の明かりに照らされ、何とも淫靡だ。
 多分自分は今、物凄いものを見せられている。ルルーシュは心の底でそう確信する。幼気に震える腰、強張る太腿、跳ねる肩。手伝うなと制された手前、触れることも許されないのがネックだが、スザクの努力を無下にはできない。というより、恋人の淫らな行動を間近で見せてもらえるこの機会を、無駄にしたくない。
「はう、うう、あ」
「一人でも、出来てるか?」
「指、入ったよ、ほら」
 シーツの上を彷徨っていた手を掬われ、尻の後ろに宛てがわれる。すっかりぬるついたそこは確かに、触る限りでは指が三本ほど食い締めていた。ひくひくと痙攣する穴の縁が、懸命にスザク自身の指を受け入れようとする。
「あっ、や、弄っちゃ」
「た、確かめてるだけだ」
 その周囲を拡げるように伸ばしてやると、彼は顔を赤くして頭を振る。汗の粒が飛び散って頬を濡らした。
 そうしているうちに倒れ込んでくる体を抱き止めて、穴の内側に指先を食い込ませてみた。これはちょっとした悪戯心だ。
「うそ、あっ、るる、あ!」
「……」
「るるしゅ、やだ、あっや、やっ」
 腕の中で身悶える様子を黙殺し、乱雑に指を出し入れする。くちゃくちゃと聞くに堪えない音を立てながらそうしてやれば、彼はすぐさま泣きながら懇願してくるのだ。もう止めて、早く入れて、気持ちいの嫌だ、と。恥ずかしい言葉を恥ずかしげもなく、すらすら唇に乗せる。何ともまあ堪え性のない、淫らな体だ。

 手を離して息を整えさせると、スザクはルルーシュの胸のあたりに両手をついて、やはり先程までと同様に見下ろす。濡れた睫毛や目尻、唇の色気は増しているが、それ以外は変わりがない。
 あくまで今日は主導権を握りたい気分らしい。当初の宣言どおりそれは今この瞬間も続行されるようで、どこか据わった目つきや表情からその心象や覚悟は読み取れる。
 やりたいようにやればいいと思っていたルルーシュは、スザクに主導権も手綱も握らせてやった。どこまでその威勢が保つかは知らないが、本人が満足するまでやれば良い。それにいつもと趣を変えてみるというのも、また違った愉しみがある。マンネリとは露にも思っちゃいないが、いつもと異なる表情や仕草には正直言って、そそられる。

「ああ待て、あれが」
「このままでいい」

 上半身を反らせて、テーブルからコンドームの箱を取ろうとした瞬間だった。
 スザクはルルーシュの手にあるそれを見て、生でしたい、と強請ってくる。
「でも……」
「どうせティッシュに包まれて捨てられるなら、僕が貰ってあげる」
「……」
 箱を取った手は宙に浮いたまま、着地点を見失って彷徨う。
「なんかお前、変なこと考えてるな?」
「……もう、入れるね」
 話が噛み合わない、というより話をしてくれない。
 腰に跨がる男は陰茎を掴んで、ぬかるんだ尻の合間に宛てがう。不安げに顰められた眉間が、前髪の隙間からちらりと覗いた。
 やはり、どこか無理をしている。

「おいスザク」
「……あ」

 先端が熱い内部に食い込み、そのままずるずると竿が収まってゆく。絡みつく襞と体温に神経が圧迫され、敏感な粘膜が容赦なく撫で付けられる。ぺたりと男がそこに腰を下ろした瞬間、二人は息を切らしたように肩を揺らして、全身から汗を吹き出していた。
「やば、あ」
「るる、あっ、あ、っい、うあ、ひ……」
 雪崩のように体勢を崩す肉体を両手で何とか受け止めながら、汗でぬるついた背中を撫でてやった。耳元に倒れ込む顔は表情が見えない。真っ赤に充血した耳元は汗の匂いがした。
 あ、あ、と意味のない母音を溢しながらひっきりなしに腰が跳ねている。腹のあたりに生温かい、水っぽい物の感触がする。入れただけで達してしまったのだろうか。
「意固地め。体のキャパを考えろ」
「うう、ふう、あ」
「一旦抜け」
「やっやだ、嫌……」
 泣きじゃくりながらゆっくり肘を付き、尚も起き上がろうとする。見上げた根性と精神だ。一体何が彼をそこまでさせるのだろう。間近に見えた瞳は涙色に染まって潤みっ放しだ。
 背中を曲げながらも両手をシーツの上に着いて、控えめに腰を揺らす。真上から降り落ちてくるのは涙と汗と、もう躊躇うことをしない嬌声と。噎せ返る色香に誘われて、冷静な思考が汚染されていくのを肌で感じた。
 痛いくらいの締め付けに視界が霞んだ。焚き付けられる熱と迸る性感に、全身が蝕まれる。それらはすべての問題を有耶無耶にして、まるで無かったことのようにするのだ。
「だ、出して、中に、いいから」
「……」
「あう、う、あ、るる、おねが……」

 スザクはひたむきに腰を揺らして、己の名前を呼ぶ。自分の手で慣らし、受け入れる準備を施したそこで、快楽を得る。これ以上ないくらいの献身だ。幼気な奉仕の数々に胸が苦しくなる。差し出すことに躊躇いがなさ過ぎて、いっそ心配になる。
「……夕方に花を、生けてただろ」
「……?」
「明日は休みだ。花を見る奴は居ないよ」
「あ……」

 ぴたりと動きを止めて、彼は漸く気づいたと緑の双眼を瞠る。顎先から垂れた汗が水滴となって、首筋に伝い落ちるさまを、ルルーシュは視線だけで追っていた。
「無駄なこと、しちゃったな……」
「この行為も無駄と思うか?」
「思わない」
 曲線を描く腰を手のひらでなぞり上げ、その翡翠に問う。水辺に浮かぶ花びらのように揺蕩う虹彩は、部屋の明かりできらきらと光っていた。
「でも、勿体ないよ。僕の為に、死んじゃうなんて」
 彼は口を動かながら器用に腰を揺らし始めた。細やかな喘ぎが耳に届いて、また腰が熱くなる。
「みんな、欲しがってる。君の遺伝子や、それを受け継いだ、子孫をさ」
「擦れば出るもんだ。何をそんなに有り難がる」
「ルルーシュ、だから。将来この国の、皇帝になる君だから」
 裸の胸を撫でさすり、愛おしげに目を細める。目尻から一筋の涙が零れ落ち、頬に流れて消えた。
「僕のせいで無駄になるくらいなら、捨てるくらいなら、ぜんぶ貰うから」
「はは、弔うってことか?」
「僕の体で、ぜんぶ、供養してあげる。君の……」
 下手くそに笑いながら、スザクは懸命に腰を揺する。どこか悲しそうな瞳の色がルルーシュの目前に広がり、やがてそれは涙を溢す。

 時折引き攣る臀部に両手を添えてやれば、男は焦ったように肩を揺らして抗議の声を上げる。ひくつく穴は引き絞られ、内部がひどくうねった。恐らく彼が故意にそうしてる。
 しかしそうせねば、制されていた手を出さねばならない理由がこちらにもあるのだ。
「物足りないんだ。悪いけど」
「あっう、う!」
「欲しいならやるけど、どうする?」
 一度動きを止めてやって、泣き腫らした顔を覗き込む。試すような言い回しはわざとだ。スザクに与えてやれる選択肢など初めから存在しない。しかし言質は欲しい。あくまでこれは彼の意思であるという、体の良い証拠が聞きたい。
「ほし、ほしい……ルルーシュ、ほしいよ」
「なら頑張れ」
「あっ、あ……」
 目を見開きながら、瞬きもせず、スザクは声を上げる。中を無茶苦茶に掻き回して、掴んだ尻たぶに指を食い込ませた。ぐちゃぐちゃと水音が響いて、それに彼の声が重なる。
「ひっい、いあ、やっあ! あう、んっ、ひぐ、う!」
 びゅく、と色の薄い精液が飛び散る。ルルーシュの臍の窪みにはいつの間にか、水溜りのように滴ったスザクの体液が広がっていた。
 これだけ出していたらそれは、苦しいだろう。もういけないと、体はとっくに悲鳴を上げているはずだ。
「はあ、っあ、う、るる、きもち、い?」
「……うん」
「ん、う、ひあ、ふふ…あっ、ひ、っイ、ん」
 目が合って、ほんの少し微笑む。婉美な表情はルルーシュに恋をして、夢中で堪らないと訴えかけるのだ。
 舌先を伸ばし合って擽ると、頭の中がそのことで埋め尽くされる。もう何もかもどうでも良くなって、それこそ職務や地位、名声、肩書き、自分を構成する枠組みを、今この瞬間だけは抛とうと思えた。

 目先の欲にかまけるのも、悪いことばかりじゃないはずだ。しかも今晩は金曜で、夜はまだ始まったばかりなのだから。
 しどけなく倒れ込む体の重みは少しばかり苦しいが、嫌な気はしない。この息苦しさが幸せのかたちだとするなら、不器用な彼の感情表現に似ていて、とても好ましい。そう思えて、ルルーシュは震える背中をかき抱いた。



 布団に包まったまま動こうとしない男を一瞥し、ルルーシュはそら見たことかと呆れた。太陽はもうとっくに天の高いところに昇っているというのに、彼は今朝からろくに身動きが取れずにいた。
 理由は単純だ。腹の中で吐き出された精液を掻き出さずそのまま熟睡し、翌朝を迎え。起き抜けに彼が発した最初の一言は、お腹が痛い、だった。

「ほら。消化に良いものを作ってきたから食え」
 盆に乗せた器には卵がゆを、脇には温かいほうじ茶が入ったコップを。それぞれは柔らかい湯気を立たせ、スザクの食欲と興味をそそろうとしている。ベッドの傍のテーブルにそれを置いてやって、未だろくに栄養を摂っていない彼に言いつける。
「なんなら食わせてやろうか」
「一人で食べれるし」
「……なんで拗ねてるんだよ」
 木製のスプーンを手に取った男は、肩から毛布を被ったままそれを食し始めた。虚ろな目はよく見ると腫れていて、俄に罪悪感を覚える。しかし自分は悪くない。奴がそうしてほしいと言ってきたから、そうしたまでなのだ。ルルーシュは腕を組みながらその様子を眺め、自分への言い訳を繰り返す。
 寝る直前にも、ルルーシュはスザクに何度も説いたのだ。出したものは外へ排泄しないと体調を悪くする。腹痛になるぞ。精液で体を壊して病院に担ぎ込まれたらどうする。俺は付き添いたくない。
 説得を試みたものの、スザクは頑なだった。元より意固地で頑固な性格だったから嫌な予感はしていた。しかしだからって、出されたものをそのままにして寝るとは思わなかった。これはルルーシュの誤算だった。
「あ、美味しい」
「なら良かった」
 腕を動かすうちにずり落ちていく毛布を掴んで、裸の肩にかけ直してやる。ついでにその隣に座って、穏やかな摂食風景を眺める。
「食べ終わったら一緒に風呂に入ろう」
「またするの?」
「それは、まあ……その時次第だ」
「そっかあ」
 昨晩は散々なことをしてしまったから、後悔と反省は十二分にしている。きっとスザクのあらぬところは腫れていて、傷んでいるだろう。暫くは自制が必要だ。
 しかし理性がそうやって判断しても、絶対に手を出さない、と誓えないのはルルーシュの甘さである。今この瞬間だってそうだ。体を傾け、自分の肩に頭を預けてくる男の仕草に、生ぬるい感情が込み上げてくる。上目遣いで顔色を窺ってくる表情は、ひどく目に毒だ。

「……あ。あれは」
「うん」
 スザクがスプーンを器の端に置いて、部屋の隅を指差した。
 窓の光が届かない翳った場所に、昨晩までは無かったはずのある物が鎮座している。

「今朝、執務室に取りに行ったんだ」
「わざわざ? どうして」
 昨日の夕方、彼が取り替えてくれた花と陶磁の花瓶である。白い花びらをつけた植物は未だ瑞々しい葉を伸ばし、花弁は天を向いたままだ。花瓶の水もついでに入れ替えたところである。
「勿体ないだろ、誰にも見られず枯れていくのは」
「ふうん? 珍しいな、そんなこと言うの」
「まだ飾られる価値があるからな。捨てるのはそれからでいい」
 元気な葉の色や茎の状態から見て、一日は保つだろう。首を傾げるスザクに目を合わせて、ルルーシュは淡々と答える。
「花も喜んでくれてるかな」
「植物に感情はないよ」
「すぐそういうことを言う」
「あったら困るだろ。あったら、そうだな……」
 シーツの上に投げ出されていたスザクの手を取って、ルルーシュはほんの数秒思案した。
「今晩も今と変わらず、元気に咲いててくれるんじゃないか」
「だとしたら嬉しいなあ」
 ふにゃりと目を細めて笑う。緑は綻んでルルーシュの隣で咲いていた。

 その日の晩、花瓶に生けられた植物は今朝と瓜二つの状態で花を咲かせていた。ルルーシュとスザクは丁寧に水を入れ替えてやり、花瓶の掃除をした。
 そしてその翌日。物言わぬ生命は強かに、昨晩と同じ姿かたちを保ち続けていたのだ。驚くことにそれは三日三晩ほど続き、やがて花は緩やかに寿命を迎え、枯れていったという。